「カフネ」阿部暁子 著

2025年の本屋大賞は、阿部暁子さんの小説『カフネ』(講談社)が受賞しました。
本作は、全国の書店員が「いちばん売りたい本」として選ぶ本屋大賞で、初ノミネートにして初受賞という快挙を達成しました。
オーディブルで聞くことができたので早速、「耳読」してみました。
これは、最愛の弟を亡くした41歳の野宮薫子と、弟の元恋人・小野寺せつなが、家事代行サービス「カフネ」の活動を通じて交流を深めていく物語です。
食事を通じて心を通わせる二人の関係性が丁寧に描かれています。
「カフネ(Cafuné)」とは、ポルトガル語で「愛しい人の髪を撫でる仕草」を意味します。
言葉にしづらい優しさや思いやりを象徴するタイトルです。
家族、愛情、死、について登場人物それぞれが、受け止めきれずに悩んだり迷ったり悲しみを背負っています。
でも、それを支えてくれる人の存在で、前を向いていけたり、大切なことに気づいたりしていく様子が、とても心に染みていきます。
大変な思いをして子育てしている人や、家族がいてもそれが重くのしかかって辛い人や、助けを求めることもできない人がたくさん出てくるのですが、これは小説の中だけの特別な人ではなく、実際にいくらでもいるような人たち。
辛い時に手をさしのべてもらった人は、いつか誰かにも同じことをしようと思えるんですね。
自分一人ができることは小さなことでも、人の気持ちに寄り添って、誰かの助けになることって、思った以上に相手に大きな喜びを与えるのかもしれません。
一人一人が一生懸命生きていることで、誰かに少なからず影響を与えている。
タイトルにあるような、愛しい人の髪を撫でる、というのは、愛情を表す素敵な行動。
ポルトガルでは、これに名前がついていることが素敵です。
日本にはこれに名前なんてないですよね。
深い喪失と、再生を描いた素敵な小説でした。
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