「俺たちの箱根駅伝」感想
あまり小説は読まない方ですが、箱根駅伝のことを書いたこの小説は、以前から気になっていました。
1ヶ月99円というキャンペーン中にオーディブルに再登録した直後、この小説をオーディブルのホーム画面に見つけた時、迷わずライブラリーに追加しました。
普段は、なかなか腰を落ち着けて本を開くことができないでいる私でも、オーディブルの音声を聞くぐらいなら、家事をしながらでも歩きながらでもできる。
よし、これを聞くぞ、と聞き始めたら最後、ストップするのが難しいほど、物語に引き込まれました。
登場人物の細やかな感情の動きなどが、鮮明に描かれていて、惹きつけられました。
ナレーターの人が1人で読んでいるとは思えないほどの、声の使い分けのうまさ。
そのおかげで、一人一人の性格や、特徴や、感情までも手に取るようにわかりやすく、ドラマを見ているように鮮明に目の前に映像が映し出されるような感覚がありました。
箱根駅伝といえば、長年マラソンを続けている父が、お正月になるとテレビにかじりついて見ていた光景が思い浮かびますが、正直、ただ人が走っているだけの映像を見ても、当時の私には何が面白いのかさっぱりわかりませんでした。
私が面白さに気づいたのは、たまたま何の予定もない正月に、なんとなくつけていたテレビから流れてきた箱根駅伝の映像に、娘が目指していた大学が出てきたことがきっかけです。
たすきをつなぐたびにどんどん上位に上がっていくその大学を見ていて、つい引き込まれて見ている自分がいました。
出身地、どんな環境で育ったのか、など選手1人1人の背景をアナウンサーが説明しているのを聞いていると、どの選手も同じではなく、箱根駅伝に出場するまでのドラマが選手の数だけあります。
それを知るにつれて、応援する気持ちにも熱が入ります。
娘の学校になるかもしれない大学が、優勝して、ますます箱根駅伝が楽しみになりました。
私の箱根駅伝の知識はその程度のもので、はたしてそれを小説にしたところで、面白いのだろうか。
そんな気持ちで聞き始めたのですが、この小説では大きく、学生側の話とテレビ局側の話に場面が交互に変わり、こんなにも人が動き、感情がむき出しになるのかと、どちら側の話も興味深く、ハラハラさせられるのです。
箱根駅伝の表舞台では見られない、テレビ局の準備、中継アナウンサーの選定、定点カメラの設置、たったそれだけのことにも、多くの人が動いて、揉めて、当日に備えるということ。
テレビ局の中でも、制作側、編成側での思いや意図が微妙に違い、軋轢が生まれるのに、結局スポンサーの力が大きく働くということ。
学生側は、箱根駅伝の強豪校にスポットを当てるのではなく、まさかの関東学生連合の選手たちにスポットを当てたストーリーとなっています。
箱根駅伝は、前年大会でシード権を獲得した上位10校と、予選会に通過した10校と、予選会で惜しくも敗退してしまった大学の中から1名ずつ選抜した寄せ集めチームの関東学生連合が出場する。
その関東学生連合というのはオープン参加で、順位はつかず、記録も参考記録となるらしい。
私はそのことも知らなかった。
なんてひどい扱いなんだろう。
そのことで、周りも関東学生連合というものを下に見て、注目すらしない。
そんな彼らも、そういう状況で全員がモチベーションを高く保つことが当然難しく、それがこの物語で大きなポイントになる。
この小説は、上下2巻の大作になっていて、上は箱根駅伝を走るまで、下は箱駅伝本番。
それぞれデフォルトの速度で聞くと、10時間以上、上下で20数時間にもおよびます。
私は1.2倍速で聞いていますが、特に早すぎることもなく、これくらいがちょうどいいのではないかと思います。
実はまだ、下があと1時間半ほど残っている状態で書いているので、結末がまだわかりません。
早く結末を知りたいと思いながら、これを書いています。
箱根駅伝をテレビで見ている以上の奥深さと面白さ。
実在している大学名も出てくるので、リアリティがあります。
箱根駅伝をより深く知ることができ、次の箱根駅伝の見方が変わる一冊です。
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